〈僕〉と〈僕たち〉のズレについて 〜ウンゲツィーファ『さなぎ』〜(伏見 瞬)

ウンゲツィーファの『さなぎ』はズレていた。何もかもがズレていた。僕はホッとしていたと思う。おそらく、「僕の生きてる世界はたしかにこんな風だ」と感じたからだ。同時に、「僕たちの生きてる世界はたしかにこんな風だ」と感じたからだ。この二つの感情も、当然ズレている。  この上演は、時間と空間をいくつか織り込むように出来上がっている。主に二つの空間がある。まず、ワーキングホリデーで南の島にきている女の… 続きを読む

か弱さについてー佐藤朋子「103系統のケンタウロス」(伏見 瞬)

馬はか弱い。 小学校の高学年の時、私は競馬に夢中だった。理由はよく覚えていない。1995年の秋、日曜昼の情報番組で天皇賞・秋の予想コーナーを偶然目にし、出演者があーだこーだ予想をしている様子にワクワクした記憶がある。そこから急激に興味を持つようになった。中学生に上がる前頃から音楽に夢中になり、馬への熱は冷めていくのだけれど、とにかく私は約二年間競馬のことばかり考えていた。過去のレースの記録映像を漁り… 続きを読む

お化けだけが息の仕方を知っている(ロロ いつ高シリーズVol.7『本がまくらじゃ冬眠できない』)

(11月22日、早稲田どらま館)   とにもかくにも僕は老いるか死ななきゃいけない。大阪万博が始まる頃にはいくつになっているかなんて誰にも教えたくない。人は老いて、今まで成したことも虚しくなり、時間は痩せ細り、有り得たかもしれない死んだ可能性の束だけが重く太くなっていく。仕方ないものは仕方ないけど、嫌なものは嫌なのである。   三浦直之はずっと「死んだ青春」に命を捧げている。『いつだっ… 続きを読む

インターネットに苦しむ全ての人たちへ ー庭劇団ペニノ『蛸入道 忘却ノ儀』ー

今更言うまでもないが、インターネット上に書き込まれたすべての言葉はゴミに劣る。こいつらには音も匂いも味もない。文字記号だけの貧相な連中であり、夜の埼京線の電車内に放たれた黄ばんだゲロより価値がない。物質的な存在、つまり眼球を動かし、指先を操り、めしを食い、小便をして、ふとんの上で横になる人間(もしくは文字を操れるその他の物質)の存在が張り付くことではじめてこいつらは価値を持つ。それは自転車に対する… 続きを読む

今後の公演おすすめ(6〜7月)

伏見です。 またもやしばらくサボってしまいましたが、今後の演劇情報です。もうダメかなと思わせといてしぶとく続けるスタンスでいきます。   まず、ほんとに直近ですが、5月26、27日に北千住BUoY2階奥イベントスペースにてブイブイパーティー『静かなパーティーは成立するの?』が行われます。 このイベントにはワワフラミンゴ、情熱のフラミンゴと共に、批評再生塾3期総代、この『劇の批評』にもたびたび投稿… 続きを読む

Google Mapのエロティックな誘惑―関優花「うまく話せなくなる」

関優花個展「うまく話せなくなる」をrusu「ナオナカムラ」に見に行って、これは言葉にしなければならないと思い書かれるこの感想には特に結論はないが、彼女の作品の少しばかりの紹介になればと思う。 https://drive.google.com/file/d/1TpOpPj281bL_Atvsb32e1uCaXZA01sbc/view  彼女はこれまで歌舞伎町24時間マラソンをしたりチョコレートの… 続きを読む

「わたしがいる。山がある。」―烏丸ストロークロック『まほろばの景』(渋革まろん)

日時:2018年3月1日(木)〜4日(日) 会場:東京芸術劇場 シアターイースト 作・演出:柳沼昭徳 音楽  :中川裕貴 出演:阪本麻紀 澤雅展 角谷明子 小菅紘史(第七劇場) 小濱昭博(劇団 短距離男道ミサイル)松尾恵美 [WEB] http://www.karasuma69.org      烏丸ストロークロック『まほろばの景』を見た。  烏丸ストロークロックは京都を拠点に活動する劇団。という… 続きを読む

なにかとなにかを結びつける磁場 ―烏丸ストロークロック『まほろばの景』東京公演を見て

平昌オリンピックも終わり、次は2020年の東京オリンピックだと思う人も多いかもしれない。しかし、3/9から開催される身体障碍者(肢体不自由、脳性麻痺、視覚障害、知的障害)を対象としたパラリンピックが開催されることを意識している人もまた多いかもしれない。その狭間の3/1~3/4まで、東京芸術劇場シアターイーストで公演されている烏丸ストロークロックの『まほろばの景』を観劇してきた。  烏丸ストロークロ… 続きを読む

トーキョー小劇場ではない「なにか」/uni『食べてしまいたいほど』(渋革まろん)

演劇活性化団体uni『食べてしまいたいほど』 ※「ちょいとそこまでプロジェクト②練馬区・高松編」記録冊子より転載 https://www.uni-theatre.com/choisoko-tamamashu/ 2017年11月11日(土)〜12日(日) @みやもとファーム とうふ房 《出演》 高橋 由佳、トヨザワトモコ、矢部 祥太、粕谷 知世(プレス)、山本 和穂、新藤 秀将 《構成・演出》 阿部 健一* 《戯曲協力》 塩田… 続きを読む

今後の公演おすすめ(2〜3月)

こんにちは、伏見です。 毎月演劇情報を更新するといいながら2ヶ月半ぶりになってしまいました。 まぁ一回目は気合いを入れて3ヶ月分くらい書いたのでちょうどいいか。 今回も私の独断と偏見でおもしろそうな演劇の公演を紹介します。 まだまだ色々あるはずですが、とりあえず。 ご参考にしていただければ幸いです。 2月後半から3月前半が観たいの多過ぎて困ります!   東葛スポーツ『袋とじ根本宗子』 (2月16日〜18日… 続きを読む